高杜 一榮の世界

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024s

モノローグ

20201106金曜日

実を言えば刺青に興味がある。その契機となったのは、銭湯で背中に刺青のある女性を見かけた時だった。色の極めて白い女性の背中に何かおどろおどろしい色鮮やかな龍と花が広がっていた。「あれ何?」とわたしは裸の母親に尋ねた。彼女は低い声で「イレズミ」と囁いた。後でわたしは聞いた。「何であんな絵を背中にのせているの?」「さあ、目立ちたいとか、人を威嚇したいとか」「イカク?」母親は大人にならなければ判らない単語として威嚇を教えてくれた。その意味があまり判らなかったが、つまり自分が友達に会う時に色の鮮やかなマフラーを首に巻いたりすることと通じていると感じた。イレズミはそれからわたしの脳裏にほとんどイレズミのように刻まれた。ある意味刺青に憧れがあった。その後表紙に刺青の写真の載った雑誌を見たことがあり、それが脳裏にまた刻まれ刺青記録は増えていったのだが、ある時凄く奇妙で恐ろしい刺青を一度見たことがある。友人が入院した際に見舞いに行くと、その友の真向かいの男性が刺青を入れていると知らされた。「見たいか?見たいなら話して頼んでみる」友は若く非常に丹精でいわゆる美男子に属する患者に「この子が見たいって言ってるんだけど見せてくれる?」と頼んでいた。するとその青年はすぐパジャマを脱いで背中を見せてくれた。その刺青はおそらく他の同じような絵は決して見当たらないと思しき「恐ろしき絵」で誰も同じ画を刺青にしないと思えた。入れ墨を見せてくれた。その絵は寂しい林の中の墓地にありそうな見事に薄気味の悪い画だった。わたしは口を噤んだまま唖然とした。どうしてその絵にしたのか?と質問したら、「誰もいれないだろうと思う画を選んだ」と述べた。その青年の心の中に何かあったのか、よく判らないが彼のその刺青は彼の人生を支えていると思えた。
2020年11月06日 12:30