高杜 一榮の世界

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024s

モノローグ

20201105 木曜日

前回六本木で山羊を飼ったことを書いたが、家庭の中でかなり暴君的で(父は子供を可愛がっていたが、男の子だけだったようで)わたしは圏外にいたらしい。後に父母が離婚するとか別居するなどのゴタゴタがあり、最終的には母の家で暮らすことになった。あの当時のことは思い出したくない出来事があったが、大きな事件としては、金魚屋さんとのゴタゴタがあった。三男の兄は鳩が好きで鳩を多い時で二十羽以上飼っていた。ある日兄が「鳩が金魚屋さんのところに行ったまま帰らない」と父に告げ、問題が大きくなった。帰らない鳩を取り戻したかった兄はある日金魚屋さんの鳩が混じっているのを鳩小屋の中を見て気が付いたのだが、その鳩がトラブルの幕開けにした。「あそこの家が鳩を返してくれないので、あそこの家の鳩をこのままこちらで預かっておこう」ということになった。するとその家の息子が取り戻しに来て「返せ」と言った。だが「そちらに行っているうちの鳩を返してくれたら返す」と返事をすると、その日のうちに金魚屋の行商人たちが、数名押しかけてきた。すると日頃のんびりと絵を描いている我が家の男子たちはすぐ「闘いだ!」とまるで今まで一度もボクシングや格闘技を習ったことがないのに、真剣に闘ってしまった。わたしはそれを窓から見ていたが、うちの男子たちは(痩せて見事にへなへなの父を含めて)戦ったのだから驚いた。あれはほとんど不思議な出来事だったと思える。なにしろ日頃運動も激しい格闘もしたことのないうちの男子たちは、むくつけき外見屈強な男たちに立ち向かい、見ていると棒や箒で闘い、あっという間に勝ってしまった。わたしの眼に頭が血塗れになっていた男の頭をタオルで拭いている母が見えた。その血塗れの男性が当時その辺りで有名なYの字の親分だったことが後で判った。事件は警察に知られ、母は警察まで詫びに出掛けた。すると警察は、頭に血を流していた親分の家に謝罪に行きなさいと言われ、その言葉通り親分の家にお金を包んで謝罪に出掛けた。後で聞いたら、かなりその当時その辺りで有名な親分だったことを知ったが、その後父は親分に勝ったと噂になり、近所の人が通るたびに皆感謝してくれた、という。今思い出すと世の中裏と表が逆転することになる時もあるのだと、学んだものだ。
2020年11月05日 10:51