高杜 一榮の世界

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モノローグ

20191228土曜日

幼かった頃六本木で育ったわたしは、三歳か四歳ぐらいの可愛らしい金髪の女の子ジミリュウと親しくした時期があった。自分が二つほど上だったのだが、今思い出すと彼女との付き合いがきっかけで外国語に興味を抱いたのだと思う。自作にも書いたが、毎朝彼女はわたしの家の雨戸を手で叩き「アケテヨー」と覚えたばかりの日本語で叫ぶ。すると家族が起き、長兄が雨戸を開けると、彼女は飛び込んできてわたしの布団の中に潜り込む。二人でキャッキャッと戯れてそれから庭に出て遊んだ。わたしがミリュウを可愛がってくれていると知った彼女のママはランチに招待してくれた。その後横浜にドライブに連れて行ってくれたりした。彼女と過ごしたほんの短い時期はその後わたしの脳裏にくっきりと残っている。後で彼女の国アメリカが日本と戦争し、日本はその国によって原爆を落とされたのだ、と学んだ。しかし当時の父母はアメリカが原爆を落としたとも、アメリカは恐ろしい国だとも言わなかった。その上彼女のパパがパイロットだったが、パイロットの彼女の父が戦争に駆り出されていたかどうか、なども全く知らない。そうだったとしても、父母はアメリカに対して敵意を抱いていなかった。父によれば戦後働くところのない頃、横浜に行き、軍艦が着くとアメリカ兵がどんどん降りてくるのを待ち、似顔絵を描きますと手振り身振りで言い、ドルを稼いだという。父母のその苦労を今思うと内心表現できない気分になる。
2019年12月28日 08:43